馬という生き物にハマる
初めて会った対州馬という馬は、対馬の原産で、日本における在来馬8種の中の1種です。
私の住む長崎市はほとんど平地のないところで、港を取り囲む山の斜面地にへばりつくように街が広がっています。斜面地を蜘蛛の巣のように這う小径は、階段状になっている場所も多く、地元では坂段(さかだん)と呼ばれています。
当然車両などは入ることができず、坂の街に家を建てたり、道路や墓所を築く時には往生することになります。そこで重宝されたのが荷運び馬として適していた対州馬なのです。
しかし、この時点で現役の馬搬による荷運び業者は、既にゼロとなっていました。
ともかく話でも聞きたいという胸いっぱいに膨れ上がりました。
今、私は妻や子どもたちから「ウマくん」と呼ばれていますが、その第一歩がここから始まったのでした。
2009年の2月まで長崎市で最後の馬搬業者としてがんばっていた方を探し当て、荷運びの話を聞いたり、そのまま残されている厩舎(馬小屋)を見せてもらったりしました。
話を聞くことができた元・馬方さん達というのは、どなたも大変感じのいい方ばかりでした。どこの馬の骨ともわからない者の質問にも丁寧に応えてくれました。そのことで、益々私は対州馬=荷運び馬に惹かれていくことになりました。
最後の馬方さんが使われていたのは、残念ながら対州馬ではありませんでした。廃業後に或る施設に譲ったという2頭は、道産子のミックスと木曽馬でした。
私は当然、その2頭を訪ねて行き、その施設の引き馬を手伝ったり、数十キロを馬と一緒に歩くイベントに参加したりしました。
その中で、簡単な馬の調教にも触れたのですが、教えてくれたのは「馬好きの乗馬が趣味」程度の人だったので、色々とうまくいかないことを目の当たりにしたりする内に、調教に関する疑問も湧いてきて、調教に関する資料を手あたり次第に探しました。