馬を飼養する目的により異なるので一概には言えないが、最悪な飼い方だけは示すことができる。
「馬房に繋ぎっぱなし」の飼い方だ。馬に限らず何の生き物でも当たり前のことだが、身動きの取れない場所にずっと閉じ込められていたら、その肉体的、精神的な苦痛は想像に難くないだろう。
馬という動物は基本自分のテリトリーから出ない習性を持っているが、だからと言って狭い馬房に入れっぱなしでよいということではない。犬のように散歩や運動をさせることが容易でないがゆえにほぼ馬房に入れっぱなしという馬たちも残念ながら相当数居ると言わざるを得ない。本来草原を駆け回る動物を人間のエゴで狭い場所に長く閉じ込めておくことは虐待と指摘されても致し方ないだろう。
しかし、一方でただ広さのある場所で放し飼いに近い状態にしておくと、人が制御できない馬になってしまう。
それではどういう場所でならば、適切な飼養ができるか。これについては、対州馬の産地県である長崎を基本として項目に分けて述べたい。
①少なくとも100 ~ 120坪くらいの広さがあること。
・この場所に資材を横づけしたり、馬を運動させることのできる道路があるべきである。
②その場所に適度な日陰があること。
・馬は寒さには強く、暑さには弱い。夏場に日陰が無い場所。あっても高温にある厩舎内にいなけらばならないとしたら、それは拷問に近い虐待となる。それどころか、熱中症などによる死亡リスクも非常に高くなる。できれば、いずれの時間帯にも木陰となる場所があることが望ましい。
③土の質が粘土質でないこと。
・土が粘土質であると、馬の体重で土中に蹄が沈み、従って蹄の状態が非常に悪くなる。これにより体のバランスが崩れ、健康のバランスも悪くなる。蹄の伸びも早くなり、手入れも難しくなる。また、粘土質の土地は吸水性が極端に悪くなり、降雨後はいつまでも水が溜まる。水が溜まるとサシバエ等の害虫も発生しやすい。百害あって一利なしである。
④適度な斜面があること。
山羊ほどではないが、対州馬はかなりな斜面も登る能力がある。この点は競走馬などとは大きく異なる点である。適度な斜面を上り下りすることで脚力もつき、気晴らしにもなる。
⑤ぼろ(馬糞)を捨てる場所が近くにあること。
・厳密に言うと、乗馬クラブや競走馬飼育など生業として馬を飼育する場合は馬糞は産業廃棄物となり、しかるべき処理を行わなければならない。しかし、実際にどこへ持って行ってどう処分するかについて、規則で細かく決まっているわけではない。ここでは、保存を目的とした対州馬の少数飼育についてのみ言及する。
まず馬糞についてだが、草食動物のそれであるので、匂いはほぼ無い。草食動物の糞が強く匂いを放つ者であれば、天敵であり嗅覚の発達した狼などに存在を自ら知らしめてしまうからだ。かと言って、放牧地内に放置していれば、それなにり匂いを発生させるし、土質を悪化させるし、害虫の孵化を促進させてしまう。したがって、毎回の餌やりの時に処理しないといけない。第一、訪問者や近隣の者に対しても不快な思いをさせてしまうことになる。処理方法として一番いいのは、穴を掘って埋めることなのだろうが、その量は膨大なものになるので、そこまでの土地を確保することは困難だろう。またリサイクルと言って堆肥にする場合もあろうが、堆肥化するのは発酵させねばならず、この発酵によって、強烈な匂いを発生させてしまう。また害虫の温床をつくってしまうことになる。よりベターな方法としては、雑木林などの場所に撒いて捨てることだろう。馬糞はすぐに微生物や昆虫によって分解され、よい土の原料となる。匂いもださない。したがって、放牧地を探す場所はこの馬糞を捨てられる場所が近くにあるか否かが重要となる。
⑥水道と電気がひける場所であること。
・毎日数回に及ぶ馬の世話を考えた時に、水道と電気、特に水道(井戸)の無い場所では飼育は無理と考えた方がよい。
⑦民家とある程度離れていること。
・昭和の時代にはそれ程問題にならかなかったと思うが、この時代馬を身近に見れる環境はほとんどなく、馬という動物はほぼ「見慣れない大型動物」である。従って一般住民にとっては馬の存在は不安なものであるということを十分理解すべきである。「匂いや虫がでるんぼではないか?」「鳴き声がうるさくて生活に悪影響を及ぼすのではないか?」「脱走したりして子どもに危険をおよぼすのではないか?」といった不安を抱かせてしまうのは、しょうがないことなのである。実際には正しく飼養すれば、このような弊害は皆無なのだが、それは実際に証明できるまで待たなくてはならない。あくまで理屈ではないのである。ちなみにうちの馬の場合、最も近い民家から15~20mぐらいの距離であった。しかし、幸い、その間に小さな河川があったため、容易に人が行き来できる場所でなかったこととある程度視界を遮断する林が存在したことが幸いだった。遂に一度の苦情もなかった。いあや、それでころか、近所の小学生達や孫を連れたお年寄りの方が懐かしいからと訪ねてきてくれることもけっこうあった。
⑧その他
・台風接近時のために、暴風林となる木々が生えているとか、水はけがいいとか、細かく言及するときりがないのでひとまずここまでとする。

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