旧北松浦郡鹿町町長串（なぐし）。西肥バス「朝地露入り口」バス停を下りると、神林小学校跡地と炭鉱住宅風な建物が見えます。
この辺り一帯が野上東亜鉱業株式会社・野上辰之助が日鉄から買収した神林炭鉱のあった場所です。
ここから北に向かって数十メートル歩くと左手に降りる道が見えますが、この先に鉱業所の各施設が建ち並んでいたようです。
この辺り一帯が野上東亜鉱業株式会社・野上辰之助が日鉄から買収した神林炭鉱のあった場所です。
ここから北に向かって数十メートル歩くと左手に降りる道が見えますが、この先に鉱業所の各施設が建ち並んでいたようです。
野上辰之助による日鉄との採掘契約が成立したのが昭和13年９月。この年の11月に起業に着手し、12月に開坑。約７ヶ月後の14年７月に着炭しています。
16年１月には隣りにあった巨大企業日鉄から鉱区を買収し、正式な「神林炭鉱」の歴史が始まりました。
（写真は神林鉱業所本部）
神林鉱は更に昭和24年、隣りの小佐々町にあり麻生岳下（あそうたけした）鉱の所有となっていた深浦坑（明治時代に開坑されるも大正時代に廃坑となっていた）を買収し、26年から旧坑取明に着手、27年に着炭及び出炭開始しています。
そのような事情もあり、神林小学校は町境を越えた小佐々町深浦を通学区に含み、深浦に住んでいた鉱員さん家族の子どもたちは一部神林小学校へと通っていました。
（かつての神林小学校）
特筆すべきは、三菱・三井・住友・日鉄・日窒といった大企業グループの傘下に属していないながらも、当時日本初という「石炭のパイプ輸送」を野上辰之助自ら考案し、29年に実現化しているなど、最先端の採炭方式を導入していたということです。
当時として画期的であったこの施設設備には政府からの援助もあり、実に１億数千万円もの資金投与をもって完成させています。
（輸送能力毎時105トン、毎日2,100トン、パイプ長垂直464m、傾斜部200m、計664m）
また採炭には前進式長壁法を採用し、払長約80～140mという切刃にストリッピング・スクレバーという採炭機を使用した他、水圧採炭なども行っています。
その他の施設としては、（深浦地区を含め）機械器具補修の為の工作工場、家屋補修等の営繕工場、安全灯室、鍛冶工場などはもちろん、入院施設を持つ病院、浴場が５ヶ所、配給所が３ヶ所、理髪店３軒、毎日映写していた映画館（会館）などもありました。
鉱員寮や看護婦寮はもちろん、炭鉱住宅は神林・深浦全部で729戸あり、従業員数も最盛期の昭和33年には職員88名、鉱員974名を数えています。
ここに最新技術を駆使した一大炭都が存在したわけですね。
神林鉱業所診療所
神林保育所
神林簡易郵便局
運動場拡張作業中の神林小学校。
昭和24年に撮影された神林小学校全景。
神林小学校と背後の山並み。
昭和32年に制定された神林小学校の校旗。
昭和37年頃の神林小学校空撮。中央校舎は解体され、グラウンドに「カンバヤシ」の児童による人文字が見えます。
その「炭都」はいったいどこへ行ってしまったのでしょうか・・・
鉱業所やその施設があったと地図に記されている場所を歩いても、「本当にここだったのだろうか？」と不安になるような、のどかな景色が広がるばかりです。
泥に埋もれた石垣の周りが黒ずんでいることから、ようやくここに炭鉱があったことを確認することが出来ます。
そして草むらの中に落ちている炭塊。
鉱業所の施設があったと思われる場所。もちろん、何の痕跡もありません。
わずかに残されたコンクリートの建造物は何か関係のあったものでしょうか・・・。閉山が昭和37年ですから、平成24年の現在まで約50年。十分これくらいの強度はあってもおかしくはありません。
上の方には水タンクのようなものが見えます。
神林小学校は閉山から９年後の昭和46年に閉校となっています。
校門と石碑だけがさびしく立っているだけです。
住宅はその後、町に払い下げられたのか、数棟だけが補修（リニューアル）されながらも現在まで残されているようです。
住宅から小学校跡地を望む。当時はこの辺りに賑やかな人々の往来があったのでしょう・・。
朽ちかけた広報掲示板。炭鉱町の様々な行事やお知らせを伝え続けたこの掲示板も、閉山を機に、その役目を次第に失ってきたのでしょう。
付近の民家に残る「学生服」のほうろう看板。ここに育った子ども達や青年達は、きっと全国へと散らばっていったのでしょう。
しかし、ここに「故郷」があったことは紛れも無い事実です。
またいつか、ふと足を運んでほしいものですね・・・。
長崎県北松浦郡鹿町町立神林小学校の思い出
清流・上矢岳川のほとりにあった、神林炭鉱・深浦鉱（旧北松・小佐々町）
「佐世保・北松炭田にあった炭鉱」 記事一覧
神林小学校 twitter
https://twitter.com/kanbayasi_syoug
16年１月には隣りにあった巨大企業日鉄から鉱区を買収し、正式な「神林炭鉱」の歴史が始まりました。
（写真は神林鉱業所本部）
神林鉱は更に昭和24年、隣りの小佐々町にあり麻生岳下（あそうたけした）鉱の所有となっていた深浦坑（明治時代に開坑されるも大正時代に廃坑となっていた）を買収し、26年から旧坑取明に着手、27年に着炭及び出炭開始しています。
そのような事情もあり、神林小学校は町境を越えた小佐々町深浦を通学区に含み、深浦に住んでいた鉱員さん家族の子どもたちは一部神林小学校へと通っていました。
（かつての神林小学校）
特筆すべきは、三菱・三井・住友・日鉄・日窒といった大企業グループの傘下に属していないながらも、当時日本初という「石炭のパイプ輸送」を野上辰之助自ら考案し、29年に実現化しているなど、最先端の採炭方式を導入していたということです。
当時として画期的であったこの施設設備には政府からの援助もあり、実に１億数千万円もの資金投与をもって完成させています。
（輸送能力毎時105トン、毎日2,100トン、パイプ長垂直464m、傾斜部200m、計664m）
また採炭には前進式長壁法を採用し、払長約80～140mという切刃にストリッピング・スクレバーという採炭機を使用した他、水圧採炭なども行っています。
その他の施設としては、（深浦地区を含め）機械器具補修の為の工作工場、家屋補修等の営繕工場、安全灯室、鍛冶工場などはもちろん、入院施設を持つ病院、浴場が５ヶ所、配給所が３ヶ所、理髪店３軒、毎日映写していた映画館（会館）などもありました。
鉱員寮や看護婦寮はもちろん、炭鉱住宅は神林・深浦全部で729戸あり、従業員数も最盛期の昭和33年には職員88名、鉱員974名を数えています。
ここに最新技術を駆使した一大炭都が存在したわけですね。
神林鉱業所診療所
神林保育所
神林簡易郵便局
運動場拡張作業中の神林小学校。
昭和24年に撮影された神林小学校全景。
神林小学校と背後の山並み。
昭和32年に制定された神林小学校の校旗。
昭和37年頃の神林小学校空撮。中央校舎は解体され、グラウンドに「カンバヤシ」の児童による人文字が見えます。
その「炭都」はいったいどこへ行ってしまったのでしょうか・・・
鉱業所やその施設があったと地図に記されている場所を歩いても、「本当にここだったのだろうか？」と不安になるような、のどかな景色が広がるばかりです。
泥に埋もれた石垣の周りが黒ずんでいることから、ようやくここに炭鉱があったことを確認することが出来ます。
そして草むらの中に落ちている炭塊。
鉱業所の施設があったと思われる場所。もちろん、何の痕跡もありません。
わずかに残されたコンクリートの建造物は何か関係のあったものでしょうか・・・。閉山が昭和37年ですから、平成24年の現在まで約50年。十分これくらいの強度はあってもおかしくはありません。
上の方には水タンクのようなものが見えます。
神林小学校は閉山から９年後の昭和46年に閉校となっています。
校門と石碑だけがさびしく立っているだけです。
住宅はその後、町に払い下げられたのか、数棟だけが補修（リニューアル）されながらも現在まで残されているようです。
住宅から小学校跡地を望む。当時はこの辺りに賑やかな人々の往来があったのでしょう・・。
朽ちかけた広報掲示板。炭鉱町の様々な行事やお知らせを伝え続けたこの掲示板も、閉山を機に、その役目を次第に失ってきたのでしょう。
付近の民家に残る「学生服」のほうろう看板。ここに育った子ども達や青年達は、きっと全国へと散らばっていったのでしょう。
しかし、ここに「故郷」があったことは紛れも無い事実です。
またいつか、ふと足を運んでほしいものですね・・・。
長崎県北松浦郡鹿町町立神林小学校の思い出
清流・上矢岳川のほとりにあった、神林炭鉱・深浦鉱（旧北松・小佐々町）
「佐世保・北松炭田にあった炭鉱」 記事一覧
神林小学校 twitter
https://twitter.com/kanbayasi_syoug
＊（説明のためにやむなく資料を引用させて頂いております。目的は、かつてこの地で暮らされていたご家族の記憶を辿る、一助になればという思いによるものです。ご了承のほどお願い致します。今後は現代の世相を鑑みて、ブログとしてのコンプライアンスをより重視してのぞみたいと考えております。2016年7月）
