昭和23年に発表された、元・坑内作業員、林 司さんの短歌を紹介いたします。
fuka968

手拭をマスクにあててドリル押す岩粉の中に呼吸乱れつつ

延先に発破かけしかば風圧のいたくするどく耳にこたふる

発破かけて浮きたる天磐の下に心せきつつ枠入れており

岩壁を破りて着炭したりしが天磐より大量の水が溢るる

天磐よりしたたる水にかはきたる咽喉を我はうるほしにけり

一面に水ふくみたる天磐よりしばしば今日も小硬落ち来つ

重圧に押されて枠の折るるときいたく鋭きひびきを上げつ


fuka967

落盤に鉄管破れてうづまりし硬の中より水は噴き出づ

落盤の下敷になるケーブル線に気を配りつつ硬積み始む

下がり来し空函車(からばこ)いたく濡れており今朝の曇は雨となりけむ

坑内に下がり来し丸太より雪解けながら湯気たちており

はかどりし今日の仕事に喜びて坑口出づれば澄む空が待つ

坑口を出づればみぞれの降る中に暖まり居し身が急に冷ゆる

たやすくはおちぬ炭あかを歎きつつ夕べの湯つぼに我がひたりおり

片腕を切断したる我が友のほがらかなるさまに振舞ふ

夜半に降る驟雨の音に交はりてたまたま聞ゆる捲上機の音

たまきはるいのちをかけし掘進の我の仕事と時に思うも


(硬:ボタ或いはズリ)

林氏について塵肺患者であったという事以外、詳しい情報は何もありませんが、短歌の文字をたどる内に写真とも体験談とも違った「炭鉱の日常」が見えてくるような気がします・・・・・

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