通りからこのアパート群を見るたびに、「まだある・・」と確認します。夜は、いくつ灯りがついているかを数えます。
耐久性とか資産価値とか、そういうことはどうでもいいのです。私の育ったアパートが跡形もなく大型商業施設に踏み潰されたように、ここもまたそうなるのか・・・、或いは建て替えられたとしても、「元の故郷」とは似ても似つかないものになってしまうであろう、ということが誰の目にもあきらかなのが切ないのです。

これは1年以上前のものなので、画像に見える鯉のぼりを掛けているお宅も、もういないかもしれません。
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それは、私でも「なんでもかんでも古いものを残せばいいというもんではない」ということは、わかっています。

しかし、「自分が育った家」というのは、その人のアイデンティティー確立のために、ものすごく大きい、と思うのです。
いや、ぶっちゃけて言えば、いくつになってもヒトは、たまには自分の育った家や町は見たいものでしょう。
アパートであれば、「今はどんなヒト、家族がすんでいるだろうか?」という興味がありますね。
でも、私にはそういう機会は、未来永劫に無くなってしまいました。

先日、図書館で昭和57年に撮られた「航空写真集」を見ていると、かつて住んでいたアパートが、まだ小さく写っていました・・・
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目を凝らすと、自分が住んでいた「はやぶさ棟、2階の3号室」のベランダには布団が干してありました。うまく言えませんが、それを確認できて、とても嬉しく、ほっとした気分になりました・・・・
住吉442

昭和20年代に建てられた風呂もついていない市営アパート。そんな老朽アパートが9棟、寄り添うように立っている場所。・・・・そこが私の故郷でした。
なくなる前に、もっと来ておけばよかった、と今は思うのですが、若い頃は「そんなノスタルジーなんて・・・」という感じだったかもしれません。


神奈川県横須賀氏在住の方から、下記のようなコメントを頂きました。 
ブログをご覧の方で、お写真を所有されているか、何らかの情報を知っているという方がおられましたら、ぜひ管理人までお知らせくださいませ!
宜しくお願いいたします。

↓ ↓ ↓

私は,昭和30年代の坂本小学校4年まで,この浜口町に住んでました.
実は,その頃はまだ三菱アパートは無く,三菱グラウンドと称して,我々子供の遊び場の一つでした.
私は,このグラウンド北側に隣接する旧国鉄の古い木造の鉄道官舎で祖父母,両親,兄弟3人で暮らしておりました.グラウンドは簡単な塀で囲われていましたが,昔の子供ですから,小さいながらもひょいひょいと乗り越えて朝,昼,夕方と探検したものです.
鉄道官舎の一画は,貧乏でしたが,のどかな,人々のぬくもりが,今でも懐かしく思い出される,私の人生の貴重な,大事にしたい風景です.

私は,定年退職後,油絵を習い,拙い絵を描いておりますが,この鉄道官舎の風景を描きたいと思い帰郷の度に探してますが写真が意外と見つかりません.
この欄をお借りして,写真の所在を御存じの方居られましたら,御一報頂ければ幸せです.横須賀市 在住 年に1~2回長崎に帰ります (S22年生まれ)




事実、私も新しい施設やお店ができるとわくわくするところはあります。そうそう古いものばかりを振り返ってばかりは、いられません。
しかし、ヒトにはやはり「還る場所」が必要だと思うのです。見たり、触れたり、そして感じたり・・・・
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イタリアには、レオナルド・ダヴィンチが生まれた家がそのまま普通に残っていたりします。そこまで残り続けて・・とは言いませんが、せめて100年ぐらいは持つものを造ってほしいと思いますね。
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今の公営アパートのエントランスとは、まったく違いますね。今は、こういう自転車やおもちゃなどの私物を置くと、注意されるのではないでしょうか?
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この場所は、市中の一等地であり、三菱に勤めていた父は「入居したくても入居できない、憧れのアパートだった」と言います。バスの中から、この滑り台に登っている子どもたちの姿がよく見えたものでした。PICT0224

この自転車たちは、すでに主を失っているようです・・・・
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この場所、浦上川のそばであり湿地であったのですが、確か三菱が「三菱球場」を建設したのが、ここであったと思います。と、いうことは、この場所で「巨人vs三菱」という試合も行われたということですね。まちがいでなければ、ですけど。
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アパートの階段途中にある踊り場は、私にとって懐かしい記憶です。よく叱られると外に出され、踊り場から外を眺めていたからでしょう・・・
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「こういう、懐かしい長崎」を見たいと思って帰って来る人も、結構多いようと思うのですが・・。
近いうちに、「いやぁ、浜口ん(の)アパートも、のうなった(無くなった)っさね」・・と友だちに話すことになるのでしょうか。
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