仕繰り(しくり)というのは、坑道内に柱を立てたり、枠をはめたりして、坑道内を安全な状態に管理する仕事で、炭鉱にとって重要な仕事であるのは言うまでもないのですが、掘進や採炭という仕事に比べると、最前線よりは後方ということで、なんとなく安全で、地味というイメージがありますが、それはとんでもない間違いです。
shikuri881

まずは、坑道を支える鉄柱ですが、ある程度までトロッコなどで運ばれた後は、写真のように、人の手で運ばれます。簡単に担いでいるように見えますが、おそらく一般の大人なら数人がかりでないと上がらないようなものだと思います。
以前、展示してある水圧式の鉄柱を持ち上げてみようとしたことがありましたが、とんでもない重さで無理でした。写真のものは、「カッペ」と呼ばれる初期の鉄柱ですので、更に重いものだと思います。
shikuri879



また鉄柱で支える壁・天盤ですが、地下数百mであれば、1平方mあたり、50トン以上もの圧力で押してきます。
写真でおわかりのように、数十cmも直径がある堅い坑木が、地圧により、砕かれています。地圧により、鉄柱さえも、ぐにゃりと曲げられることも、めずらしくなかったそうです。
こういった場所を修理、補強するのも「仕繰り」の仕事なのです。

shikuri888

加えて、炭層の周りは弱い地盤であることが多かったそうです。ご覧のような、坑木がへし折られて、石塊が落下しつつある場所で、仕繰り方の鉱員さんが補修作業を行っています。あなただったら、仕事とは言え、このような場所に入っていけるでしょうか・・・?
shikuri882

また地層の間の「溜まり水」が坑内にあふれ出てくると、狭い構内は、あっと言う間に水道管のようになってしまいます。溜まり水なら、まだよい方で、これが川底を突き破った水や海水であったならば、排水もできず、命取りとなってしまいます。
このような中でも、首まで水に浸かりながら仕繰り作業は、進められます・・・

shikuri884

鉱員さん達がもっとも恐れた坑内事故が、やはり「落盤」でした。小さな落盤があると、必ず2度目の大きな落盤があることをベテランの鉱員さんは知っていたといいます。
写真は、落盤の跡を歩く作業員さん達ですが、心中がどのようなものであったか、は想像に難くないところです。

shikuri883

絶対に油断や妥協が許されなかったのは、「仕繰り」に限らず、炭鉱内で働く男たちみんなに共通することでした。そしてそれが故に、働く者たち同士の間には、「鉄の結束・信頼関係」が構築されていたわけですね・・・・
shikuri886

そして、その鉄の信頼関係は、子どもたちに受け継がれていきました・・・
ヤマの男たちは、何より我が子に「他人に対する思いやり」を期待し、「利己主義」と「卑怯」を激しく憎んだ、と言います。現代に生きる私たちにとっては、少々耳の痛い話ですね・・・・
shikuri887



br_decobanner_20110211171247