ふらっと古本やに立ち寄ったら、永井 隆さんの「この子を残して」の初版本が、500円で売ってました。
確かに傷みもひどいし、書き込みもしてありますが、それにしても500円とは・・・・・
まぁこれも長崎ならでは、と言えば、言えなくもないのですが・・・
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「この子を残して」は、昭和23年、つまり博士が亡くなる3年ほど前に、発行されています。
これは、同本に掲載されている、在りし日の3人の姿です。
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永井博士と言えば、数年前、自分のラジオ番組で、お孫さん(長男、誠一さんの息子さん)である永井 徳三郎さんとお話させて頂いた後、送られてきた下の葉書の絵と文が非常にマッチしていて、うれしかったのを思い出します。
まるで、永井博士本人から頂いたような気がして・・・その葉書を額に入れてずっと仕事場に貼っています。
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本当に、永井博士は、「画家」としても非凡な才能を持っている・・・言い換えれば、「心に届くいい絵」を描かれています。
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本の中には、長男・誠一(まこと)さんの絵と、長女・茅乃(かやの)さんの絵も収められています。永井博士の親としての心情をうかがわせます。
当時、白血病に冒され、自身の命が長くないことを知っていた博士であれば、尚更のことであったでしょう・・・・

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同書の中で、茅乃さんの小学校入学のエピソードが綴られています。半年も前からうきうきして楽しみにしていた茅乃さんは、当日の朝、兄さんと家を出ようとして、お母さんと手をつないで行く同級生の姿を見つけて立ちすくんで動けなくなります・・・母、緑さんは原爆で亡くなっています。
その姿を見ていることに耐えられなくなった博士は、遂に茅乃さんに「早く行け!」と怒鳴ってしまっています・・・どんなにか、辛かったでしょうか。
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書の中には、給食で出たパインジュースをおわんのまま、持って帰ってきた茅乃さんのエピソードや、誠一さんと二人で、汽車に乗って大村までゆくのを、針のように神経をとがらせて心配する博士の心情なども綴られています。
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そろそろ春の到来を迎え、テレビでは、さかんにランドセルのCMなどを見ますが、成長を見届けられないとわかっていた博士は、ランドセルを背負ったりして楽しみにしている、その姿を、どのような思いで見つめていたのでしょうか・・・
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また今からたった数十年前は、親を戦争で亡くし、施設などから新入学を迎えたという子ども達も大勢いたのだ・・ということも、忘れてはならないことですね。
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本に収められている兄妹の写真です。取り壊される前の浦上天主堂の瓦礫の前で、撮ったものですが、印刷状態が悪くて、まったく表情などはうかがうことができません・・・
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本の最終頁には、今はないことですが、「永井」の印がついてあります。
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これは現代版の「この子を残して」からです。昭和23年に撮影されています。この可愛い子どもたちを残して・・・死ななければならない自分。言葉がありませんね。確かに本の題は、「この子を残して」以外になかったのだ・・とわかります。
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