この前の土曜、子どもがボールを蹴った瞬間に激痛がはしったようで、うずくまりました。翌日、足をつけないくらい痛みが増していたので、休日当番医院を探して連れていくと、どうやら足の骨にひびが入っていたようでした。

と、ここまでは問題ないのですが、その初めていった病院では、松葉杖を貸し出しするのに、「万一返さないこともあるので、5000円おいていけ」と言う。で、「松葉杖を返したら返金する」と。
実際に返さなかった人がいるのかと問うと、古ぼけたノートを看護婦さんが見せてくれたが、どうやら開業以来2件しか見あたりませんでした。しかもその2件も「連絡不能」というだけで、当時どういった事情があったのかは、定かではありません。

損はしない・・・とかそういう問題ではない。
過去、そういった事例が若干あったという理由だけで、まず「もし返却しなかったら・・・」というまず患者を疑ってかかってしまっているという認識、それから元来、お金という物は、何らかのサービス提供した後(或いは同時)か相手側が損害に値する事象を発生させた時にのみしか受け取ることができないのだという観念がさらさら無いことが問題だと思いました。
特別価値のあるものをただで借りようという魂胆ではありません。ギブスをつけた人が松葉杖無しに歩行することは、まず無理であることを知っているのは他でもない病院の医師とスタッフだろうと思うのです。
「必ず返すつもりだし、5000円も払う(渡す)必要はないと思う」と告げると「じゃあ結構です」と貸し出しに応じましたが、釈然としないものがあり、「松葉杖を貸すのにお金を取らない病院」を意地でも探して、病院を変わろうと思いました。
結局、次の日、2件目にかけた自宅からもっとも近い整形外科が、その「当たり前の」病院でした。その日の夕、子どもをこの病院へ連れて行き、松葉杖は前の病院に返しました。

「小さなこと」だったかもしれません。しかし、この一連のことを通して、「職と人格」というものについて考えてみる機会となりました。
シュバイツァーやナイチンゲールなどという名まで持ち出す必要は無いと思います。
しかし、下の写真は、昭和3年、長崎県北松浦郡に属する小値賀島という小さな離島で島民の医療に尽くしていた名も無き医師の姿をとらえたものです。小値賀島自体が無医村であってもおかしくないような小さな島ですが、写真によると更に属島と呼ばれる小島に往診に向かっています。
小値賀往診019

「医療とは何か」を考えると言うよりも、「職とは何か」を考えさせられる一枚であると思うのです・・・・。

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