アトリエ隼 仕事日記

長崎の遺産とも言うべき炭鉱・教会・対州馬など、「よかもん」をご紹介いたします・・・

対州馬の飼養と調教 8「 対州馬以外でもを調教する上で参考となる資料等はあるか 」 

なれない。
まずサラブレッドなどの競走馬はフラットなコースを早く走る事だけに特化して改良されてきているので、200%できない。
あとの在来馬でもいけそうな感じだが、昔長崎の荷運び屋さんが、他の在来馬を連れてきて試したところまったく使えなかったらしい。
かつて実際に長崎市で荷運びをされてきた4氏に話を聞いたことがあるが、皆口をそろえて「対州馬が一番適する」と答えた。一番の理由は、その動じない性格らしい。確かにあの狭い坂段を歩いていると路地から人が出て来たり、或いは犬が吠えてきたりということもあるだろうから。臆病な性格の馬には最も適さない「職場」ということになるだろう。それだけに坂の小径ばかりの長崎と炭鉱だらけだった長崎と対州馬というのは不思議な因果があるのだ。

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対州馬の飼養と調教 7「 対州馬を調教する上で参考となる資料等はあるか 」 

ない。そんなものはない。
対州馬に限らず、馬の調教についての資料がない。と言うか、あったとしてもそれは極々一部にしかあてはまらない事しか書いていない。そして、そのようなものに頼ろうとしない方が結局はいい。
しかし、対州馬が小~中型の馬と言っても体重は300kg前後あり、本気を出せば大人の男3~4人は簡単に引きずりまわす力を持っている。なんの理論もイメージも持たずに調教に挑むのは無謀以外のなにものでもない。まずどんな馬にも当てはまることぐらいは、わかっていないと馬を修復不可能な状態にしてしまう。一言でいうと調教者の体の向きと馬との距離は非常に大事で、それを抜きにしては調教はまず成り立たない。
その辺りのことをうまく説明しているものとして私が一読を薦めるのはドイツ人クラウス・フェルディナンド・ヘンプフリンクの「 Dancing with Horses (邦題:馬と踊ろう)」。
この書は馬の調教の書というよりも美しい文学としてそのまま読める。「よし、馬と向き合おう。馬を飼おう」という勇気を起こさせてくれる名著だ。
しかし残念ながらこの書は販売されていない。JRAが翻訳本を作ったのだが、販売せずに各都道府県の図書館にのみ配布している。したがって、県立図書館に行けば借りることができると思うが、どうしても読んでみたいと思う人は私が持っているファイルを分けることは可能である。(決して販売ではない)
話は最初に戻ってしまうが、そもそも「対州馬に調教は必要ない」という人もいる。まぁそういう人は、その馬が生まれて半年ぐらいから人に慣らされてきたのだということを恐らく知らないだけなのだが。


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中1の娘はなかなか苦労しているが、この時からわずか3か月前には曳かれるどころか、人が触れることすらできなかった。

対州馬の飼養と調教 6「 対州馬の牡馬は荷運び馬や曳き馬等の役馬として適するか 」 

適する。ただし、条件はある。1頭飼いをすること。
牝馬と一緒、もしくは近くでの飼養だと役馬となることはできないだろう。これは実際に長崎市内で荷運びを生業とされていた浦川さんもはっきりと述べられたことである。
(ちなみに去勢していないオス馬を牡馬(ぼば)、去勢したオス馬を騙馬(せんば)と言う)
中には牡馬、つまり去勢をしていない状態だと曳き馬や乗馬用馬としても使えないと考える人もいるが、そうではない。あくまで条件次第なのである。人間の体もそうなのだが、それぞれの臓器は絶妙なバランスでもって成り立っている。生殖器を取ってしまうことは、もちろんその生体にとって大きな影響を及ぼす。十分な精査や準備が行われないまま簡単に行われるようなことはけっしてあってはならない。
私個人としては生来、人が手を一切触れたことがなかった対州馬の牡馬を飼養し、独学で調教した。かなり早い段階で信頼関係が築け、この牡馬に攻撃されることは生涯ただの一度もなかった。
私が半野生馬だった牡の対州馬を長崎市に連れてきて2年が経った頃、ある事情から放牧地を移動しなくてはならなくなった。まだ歩行訓練も十分ではなかったが、馬運車に乗せて移動という、かなり難儀なスキルを短期間でマスターしなくてはならなくなった。結果的に対州馬のポテンシャルの高さか、信頼関係が功を奏したかは定かでないが、移動は無事成功した。事前に移動中馬が暴れるというリスクを想定して、誰か馬の扱いを知る者の助っ人を探した。私の古い教師仲間の学校に来ていたカナダ人のALTが、叔母が馬を飼育しているという話を聞き、その男に頼むことにした。しかし、そのカナダ人は事前のメールのやり取りの中で非常に馬鹿げたことを書いてきた。「去勢していないスタリオン(牡馬)は危険だから去勢した方がいい」と。おそらく彼の叔母さんの牧場では種馬以外の牡馬は乗馬などで使うためにさっさと去勢してしまうということなのだろう。「そんなことで去勢するくらいなら、わざわざ牡馬の対州馬を飼ったりしない」と返したかったが、馬鹿馬鹿しいのでやめておいた。
はたして、私の馬はさしたる問題もなく軽トラックを改造した馬運車(実際に荷運び屋さんがつかっていたもの)に乗り、すんなりと次の放牧地まで移動した。

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対州馬の飼養と調教 5「 どのような場所で馬の飼養が可能か 」

馬を飼養する目的により異なるので一概には言えないが、最悪な飼い方だけは示すことができる。
「馬房に繋ぎっぱなし」の飼い方だ。馬に限らず何の生き物でも当たり前のことだが、身動きの取れない場所にずっと閉じ込められていたら、その肉体的、精神的な苦痛は想像に難くないだろう。
馬という動物は基本自分のテリトリーから出ない習性を持っているが、だからと言って狭い馬房に入れっぱなしでよいということではない。犬のように散歩や運動をさせることが容易でないがゆえにほぼ馬房に入れっぱなしという馬たちも残念ながら相当数居ると言わざるを得ない。本来草原を駆け回る動物を人間のエゴで狭い場所に長く閉じ込めておくことは虐待と指摘されても致し方ないだろう。
しかし、一方でただ広さのある場所で放し飼いに近い状態にしておくと、人が制御できない馬になってしまう。
それではどういう場所でならば、適切な飼養ができるか。これについては、対州馬の産地県である長崎を基本として項目に分けて述べたい。
①少なくとも100 ~ 120坪くらいの広さがあること。
・この場所に資材を横づけしたり、馬を運動させることのできる道路があるべきである。
②その場所に適度な日陰があること。
・馬は寒さには強く、暑さには弱い。夏場に日陰が無い場所。あっても高温にある厩舎内にいなけらばならないとしたら、それは拷問に近い虐待となる。それどころか、熱中症などによる死亡リスクも非常に高くなる。できれば、いずれの時間帯にも木陰となる場所があることが望ましい。
③土の質が粘土質でないこと。
・土が粘土質であると、馬の体重で土中に蹄が沈み、従って蹄の状態が非常に悪くなる。これにより体のバランスが崩れ、健康のバランスも悪くなる。蹄の伸びも早くなり、手入れも難しくなる。また、粘土質の土地は吸水性が極端に悪くなり、降雨後はいつまでも水が溜まる。水が溜まるとサシバエ等の害虫も発生しやすい。百害あって一利なしである。
④適度な斜面があること。
山羊ほどではないが、対州馬はかなりな斜面も登る能力がある。この点は競走馬などとは大きく異なる点である。適度な斜面を上り下りすることで脚力もつき、気晴らしにもなる。
⑤ぼろ(馬糞)を捨てる場所が近くにあること。
・厳密に言うと、乗馬クラブや競走馬飼育など生業として馬を飼育する場合は馬糞は産業廃棄物となり、しかるべき処理を行わなければならない。しかし、実際にどこへ持って行ってどう処分するかについて、規則で細かく決まっているわけではない。ここでは、保存を目的とした対州馬の少数飼育についてのみ言及する。
まず馬糞についてだが、草食動物のそれであるので、匂いはほぼ無い。草食動物の糞が強く匂いを放つ者であれば、天敵であり嗅覚の発達した狼などに存在を自ら知らしめてしまうからだ。かと言って、放牧地内に放置していれば、それなにり匂いを発生させるし、土質を悪化させるし、害虫の孵化を促進させてしまう。したがって、毎回の餌やりの時に処理しないといけない。第一、訪問者や近隣の者に対しても不快な思いをさせてしまうことになる。処理方法として一番いいのは、穴を掘って埋めることなのだろうが、その量は膨大なものになるので、そこまでの土地を確保することは困難だろう。またリサイクルと言って堆肥にする場合もあろうが、堆肥化するのは発酵させねばならず、この発酵によって、強烈な匂いを発生させてしまう。また害虫の温床をつくってしまうことになる。よりベターな方法としては、雑木林などの場所に撒いて捨てることだろう。馬糞はすぐに微生物や昆虫によって分解され、よい土の原料となる。匂いもださない。したがって、放牧地を探す場所はこの馬糞を捨てられる場所が近くにあるか否かが重要となる。
⑥水道と電気がひける場所であること。
・毎日数回に及ぶ馬の世話を考えた時に、水道と電気、特に水道(井戸)の無い場所では飼育は無理と考えた方がよい。
⑦民家とある程度離れていること。
・昭和の時代にはそれ程問題にならかなかったと思うが、この時代馬を身近に見れる環境はほとんどなく、馬という動物はほぼ「見慣れない大型動物」である。従って一般住民にとっては馬の存在は不安なものであるということを十分理解すべきである。「匂いや虫がでるんぼではないか?」「鳴き声がうるさくて生活に悪影響を及ぼすのではないか?」「脱走したりして子どもに危険をおよぼすのではないか?」といった不安を抱かせてしまうのは、しょうがないことなのである。実際には正しく飼養すれば、このような弊害は皆無なのだが、それは実際に証明できるまで待たなくてはならない。あくまで理屈ではないのである。ちなみにうちの馬の場合、最も近い民家から15~20mぐらいの距離であった。しかし、幸い、その間に小さな河川があったため、容易に人が行き来できる場所でなかったこととある程度視界を遮断する林が存在したことが幸いだった。遂に一度の苦情もなかった。いあや、それでころか、近所の小学生達や孫を連れたお年寄りの方が懐かしいからと訪ねてきてくれることもけっこうあった。
⑧その他
・台風接近時のために、暴風林となる木々が生えているとか、水はけがいいとか、細かく言及するときりがないのでひとまずここまでとする。

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対州馬の飼養と調教 4「 馬を飼うのに届けは必要か 」

必要である。大型動物なので。
たまに体の小さなポニーやミニチュア・ホースは届けが必要でないと思っている人がいるが、そうではない。馬は馬なので、やはり所属している行政への届け出、登録が必要となる。
私の場合は、①長崎市環境課(正確な課名は忘れたが、馬の排せつ物が場合によっては産業廃棄物扱いとなるため、環境を司る行政課への確認が必要)と長崎県の②家畜保健所への登録を行った。
①は、()書きの通り、馬の飼育が生業とするものか、或いはペットとして飼育するかによって排せつ物の扱いが変わってくる。要は前者の場合、産廃で、後者の場合はそうではない。
また飼育する場所が建築法によって厩舎の建てられる場所か否かによっても、許可の有無に影響する。
私の場合は放牧飼育による飼育で、厩舎は無く(法律上建てられない)雨避けのテントがあるという設定・説明で許可をもらった。
建築法で言う「建物」とは、柱が立っていて屋根があれば、十分建物になるのだが、私は単管パイプにトラックシートを壁せているからテントという扱いで許可をもらった。
もし厩舎を建てるとしたら、或いは生業として馬を飼うとしたら、浄化槽などの設置義務などが生じてくることになるので、まず事前によく法律を確認しておくこと。
また②については、やはり伝染病被害のこともあるので、かならず登録しなければならない。けっこう無登録・未許可で馬を飼う輩もいるが、そういう者が馬を飼養することは馬にとっても社会にとっても大変な迷惑としか言えない。
長崎の場合は年に1回の書類提出で済む。


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プロフィール:江島 達也
 長崎市泉町生まれ。 私の「故郷」は戦後間もない頃造られた、お風呂もないアパートで棟の名が「隼(はやぶさ)」。それが絵師としての屋号です。群馬大学教育学部美術科卒。 大学の4年間、実にボンクラな学生でしたが、4年目は仲間と自主ゼミを立ち上げJ・デューイやM・モンテッソーリなどの教育学を学びました。この頃、前橋市内にあったフリースクール(オルタナーティブ・スクール)をつくる会などに参加しまして、この時期の様々な社会人との出会いが、その後大きな影響となりました。
包装機械メーカーの東京営業所に入社、8ヵ月後退社。平成2年より長崎県教員として県内各校に勤務しました。 平成17年末退職後、フリーのイラストレーターとして活動開始。
平成23年3月 「僕の子ども絵日記~ながさきの四季」(長崎新聞社)出版 
平成24年 「長崎の坂道で対州馬の荷運び再現」プロジェクト。25年 再び長崎市で対州馬による荷運び業再開を目指し「對州屋」として活動開始。29年 あさひ日本語学校・校長職を兼任。
〒852-8065
長崎市横尾町
tek/fax095-857-5236


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荷運び馬復活を目指す長崎市唯一の対州馬、ひん太FBページ

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